どう書く? どう教える? 読書感想文攻略法〈後編〉〜ストーリー偏重主義を返上せよ〜

こんにちは。弥栄です。

読書感想文攻略法〈後編〉です。
初歩の初歩、本当に読書感想文が苦手だなと思う人へのアドバイス。
いよいよ書き方のコツについてまとめます。

前編はこちら↓

コツその1:グッときたところに付箋を貼れ!

前編では「もっと表現そのものに注目して感想文を書いても良い」という話をしました。

でも、ただ読んでいるだけでは、どこにその「グッときた表現」があったのか思い出せないものです。

そこで、まずは付箋を貼りながら読んでいくことをお勧めします。

貼りすぎても良いんです。後から見返して、「そうそう、この部分にグッときたんだよね」と思えたら、それについて書けば良いわけです。逆に、なぜ貼ったか思い出せないものについては書かなくても良いということです。

どこにグッと来るかは自由。

グッと来るポイント例

冒頭の描写で世界に引き込まれ系

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
「吾輩は猫である。名前はまだない」
「メロスは激怒した」

そのセリフってそういう意味だったんだ系

「月が綺麗ですね」(←これは諸説ありだけど有名な例として)
「俺の毛皮のぬれたのは、夜露のためばかりではない」

その仕草にグッと来る系

「下人は右の頬にできた大きなにきびを気にしながら」
「虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと」

比喩が美しすぎる系

「夜の底が白くなった」
「私は彼の魔法棒のために一度に化石されたようなものです」

匂い・風・温度・湿度まで感じられ系

「ようやくあたりの暗さが薄らいできた。木の間を伝って、どこからか、暁角が哀しげに響き始めた」

オノマトペおもしろーい系

「どっどどどどうど、どどうどどどう」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ」

なんでもいいです。
なんかここ、カッコよくない?っていうところを探します。

ただ、あまりに多く抜き出して箇条書きのようになってしまうと面白みが半分以下になるので、詳しく書けそうなものを1~2個ピックアップするに留めた方がよさそうです。

コツその2:ストーリーを追う場合は「自分の話にシフト」する

ストーリー偏重主義について話しましたが、そもそもストーリーを追うのが悪いわけではありません。あまりにも偏っているのが問題なのです。

ストーリーだけを追うと、「~が~した。ここで私は~と思った」の繰り返しになってしまい、とても味気ない感想文になることがあります。

隙自語を入れる

ここでオススメしたいのが、「隙自語」つまり「隙あらば自分語り」戦法。

ネットでは「うざい」と思われ、「隙自語乙」と揶揄される自分語りを、読者感想文に入れ込んでいくのです。

例えばこんなふうに。題材は「桃太郎」

桃太郎を読んだ。犬猿雉はきび団子という低報酬で命の危険も顧みず桃太郎について行く決心をしたのだが、これはどういうことだろうか。私は桃太郎の人間性が素晴らしいのだと思う。報酬が少なくとも、この人と一緒に何かを成し遂げたい、そのようなことを周囲に思わせる人物だったということだろう。

私にもそういう体験がある。中学生の時のことだ。部活動の先輩に誘われ、雑巾を縫うことになった。練習後にボールを拭くためのものだ。今時わざわざ雑巾を縫う、そんな無駄なことがあるだろうか。それくらいなら100均で雑巾を買ってきて、その分の時間を練習に充てた方がいい。そう思っているのを知ってか知らずか、先輩は「アメちゃんあげるから手伝ってよ、ね?」と言って笑った。しかし、いざ手伝いを初めてみると、のんびり家庭科室でミシンを走らせるその時間は、先輩のバスケットボールへの思いを聞く良い機会となった。怪我をして出られない時期があったこと。メンバーとうまくいかない時期があったこと。先輩の話に引き込まれ、私は放課後の家庭科室での時間を心待ちにするようになった。

気づけば私は、次の試合に絶対にスタメンで出たい、そして勝ちたいと思うようになっていた。今まで「まあいいか」と考える癖がついていた私にとって、これは驚くべき変化だった。たかがアメちゃんで、と思うかもしれない。しかし先輩と過ごした時間は私にとってかけがえのない時間だった。あのとき「いいですよ、手伝います」と言ってほんとうに良かったと思っている。

桃太郎もきっと、先輩のように魅力的な人物だったんだろう。たかがきび団子でも命を賭けていいと思わせるほどの人格者とともに一つのことに向かって行けるのは、とても幸せなことだと思う。このような人物に出会えるかどうかは、もしかすると運命的なものなのかもしれない。できるなら私は素晴らしい出会いのために、自分で運命を引き寄せていきたい。そのためには損得勘定だけで判断してはいけないのだと、そう思った。

みたいな。(ちなみにこれで830字。原稿用紙2枚強が埋まりますね。)

物語の何にフォーカスしたのか

ストーリー重視の場合、その物語のどこにフォーカスして、自分の経験の何と重ね合わせたかを明確にすることです。

桃太郎の例では、
・低報酬  ・人間性
という点に注目し、自分の経験にシフトさせてみました。

つまり、

友情を読み取ったら自身の友情に関する体験を。

運命を読み取ったら、自分の運命的な出来事を。

お金の大切さだったら、それを痛感した体験を。

そうやって自語りした上で、また本編へ戻ってくるのです。そうすればいい具合に「作品のこと・自語り・作品のこと」とサンドイッチになり、まとまった文章になることでしょう。

コツその3:「すごい」をやめろ!

「すごい」を連発すると陳腐な作文に

少しブラッシュアップすることを考えるなら、「すごいと思いました」をNGワードに設定してみましょう。絶対に使わない!(当然ながら「ヤバい」も同じです。)

いや、放っておくと無限に増殖する「すごいと思いました」、これを封じるだけでもけっこう質が上がりますよ。

その代わりにどう表現するか、頭を絞って考えます。

そもそも「すごい」は「程度が甚だしいこと」を表す言葉で、良いことにも悪いことにも使われます。
でも「程度だけ」では、内容が伝わりにくい。

たとえば、「すごい点数をとった」では、良い点数なのか悪い点数なのかわかりませんよね。

そこで、

良い意味で使われる場合

・立派だ ・見事だ ・素晴らしい ・目を見張る出来栄え ・美しい ・能力が高い ・知識がある ・勇気がある ・負けん気が強い ・諦めない etc

悪い意味で使われる場合

・忌々しい ・みすぼらしい ・信じられない ・汚らしい ・おどろおどろしい ・残念だ etc

に言い換えてみるのです。

それだけではあっさりしすぎて味気ないなと思ったら、比喩を使ってみましょう。

比喩を使ってみる

「心臓を掴まれたような気持ちになった」
「まるで宝石のような恋だと思った」

どうですか?
「すごい」を連発するより、解像度が上がってきたと思いませんか?

コツその4:まとめを忘れるな!

最後の段落に「私はこの本を読んで」と書き出してみる

「どう終わっていいかわからない」という悩み、わかります。

そんなときは「私はこの本を読んで、」と書き出してみましょう。まとめに入ることができます。

でも、感想文のまとめって難しいですよね。
だからついつい

「この本を読んで○○について学びました」

という形にすると間違いないと思いがちです。つまり、

「友情について学びました」
「愛について学びました」
「正義について学びました」
「善と悪について学びました」

というふうに。前編で言及した「読書感想文ワークシート」でも、そのように枠をつくってあるのがいくつもありました。

でも、ここであえて言わせてください。

学ぶためだけに読書してなにが楽しいんじゃーーーーー!

国語の先生だって、趣味の読書は好きな本を楽しむために読むわーーー!!!

つまりね、

まとめでは必ずしも「学び」について書かなくても良いということです。

「素晴らしい読書体験でした」
「同じ作者の本を読んでみたい」
「新たなジャンルを知りました」
「金銭感覚について考えるいいきっかけになりました」

とかでもいいんですよ。

「友情について学びました。僕も友達を大事にしたいと思います」

とか書くと、かえって陳腐なんですよね…(やや暴言)毎回メロス読んでんのかって感じです。

どんな読書体験だったかが大切。

「寝る間も惜しんで本を読むという体験を初めてしました」とか。
「つぎつぎと謎が解けていって、頭の中の霧が晴れるような体験でした」とか。

書き方はいろいろ。工夫のしがいがあるところです!

題材は「文学的文章」じゃなくても良い

ここまで「小説の感想文である」ことを前提にお話ししてきましたが、そもそも題材は「文学的文章」じゃなくても良いはずです。

評論などで感想文を書いたっていいわけですからね。その場合は本を読んだことによる発見と、自分の体験を織り交ぜて書くことになるでしょう。これも楽しい作文です。

まとめ

いかがですか?
読書感想文を書くコツ(または指導のコツ)が少しでも掴めたでしょうか。

「ストーリー」だけに固執しない!
「グッと来る表現」について熱く語ってもいい!
「何かを学ぶ」ことにこだわらなくてもいい!
「すごい」を封じろ!
「隙あらば自分語り」を盛り込め!

これらに気をつけて、楽しく作文してみてください!

健闘を祈ります!

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